今さら誰にも聞けない経営者のための経営分析

もくじ

経営者のための経営分析の手法を学ぶ

ここでは、経営者のために役立つ経営分析の手法を紹介していきます。

経営分析は、会社の「健康診断」を行うことです。
つまり、健康診断をイメージすれば、経営分析がイメージしやすいというわけです。
みなさんは、身体の調子が悪いとき、病院に行きますよね。

そこで、お医者さんに診察してもらい、注射を打ったり、薬を処方してもらうはずです。

病気の早期発見には、定期的に健康診断を受けている人も多いはずです。
経営分析も同じです。

「会社の利益が思うように出なかったり、資金繰りが円滑にできない」

このような改善が必要なところを治すためにの「正しい処方箋」を出すことが、経営分析というわけです。
会社の経営は、定期的に悪い問題や改善すべきところがないかをチェックすることが大切です。

経営分析をすれば「倒産しない」というわけではありません。

しかし、経営分析をおこなうことで、経営危機を事前にチェックし、危険を回避することができます。
会社の経営も危機や問題を事前に防げれば、健全な経営をすることができます。
さらに最悪の事態である倒産を回避することが可能です。
このサイトでは、管理職に必要な基本的で実践的なものに絞って紹介していきます。
実務では、このサイトで紹介する内容で十分のはずです。

 

経営者のための経営分析の初歩

損益計算書をつかった経営分析の初歩を学びましょう。

経営分析は実践的なものです。
ここでは、具体的な事例をつかって、経営分析を紹介していきます。
経営分析が、有意義で役立つものであることが、理解できる思います。

 

年度ごとの推移で会社の業績をみる

 

まずは、営業成績を知る経営分析です。
A社の3年分の損益計算書をつかってみていきましょう。

 

              A社の3年間の損益計算書                     (単位:百万円)

科目/年度   ○1年   ○2年 ○3年
売上高 100,000  150,000  300,000
売上原価 70,000   130,000   285,000
売上総利益 30,000    20,000    15,000
販管理費 25,000    30,000    40,000
営業利益 5,000  △10,000  △25,000

 

 

A社の売上高は、○1年から○3年までの3年間で順調に伸びていることがわかります。

売上高は、〇1年の100,000円が、〇3年には300,000円へと3倍と急激に伸びています。
しかし、営業利益に着眼すると○1年に5,000円の黒字から年度ごとに悪化しています。
そして、○3年には、25,000円の赤字に転落しています。

A社は、売上が順調に伸びているのにもかかわらず、営業利益は赤字になっているわけです。
これは、どういうワケでしょうか。
経営分析をすることで、この謎が解けます。

 

売上原価率」を分析する

 

売上原価とは、売上高に対する仕入原価のことです。

そして、「売上原価率」とは、売上高に占める売上原価の割合です。

商品を売るためには、商品を仕入れなければなりません。
安く仕入れて高く売れば、当然、利益は大きくなります。
仕入れた金額より売った値段が低くければ、赤字になります。
このため、売上と仕入の関係は、とても重要です。

売上原価率の分析は、「売上と仕入の比率を知ること」と考えてください。

売上原価率は、つぎのような計算式で求められます。

 

売上原価率(%)= (売上原価÷売上高)×100

 

 

A社の売上原価率の推移は、つぎのとおりになります。

分析/年度   ○1年   ○2年 ○3年
売上原価率   70%   86%   95%

 

※ 参考 ○1年の計算 70,000÷100,000=70%

 

売上原価率は、数字が小さいほど利益が大きいことを意味します。
安く仕入れ、高く売れば、それだけ利益は大きくなるからです。
A社の売上原価率は、年々上昇しています。
つまり、利益が出にくい状態になっているのです。
原因として、仕入商品の価格が上昇している。
あるいは、売上を伸ばすために商品を低価格で販売しているため、などが考えられます。
売上原価率は、仕入と売上の両面から分析する必要があります。

 

 

「売上総利益に占める販管費率」を分析する

販管費とは、「販売費及び一般管理費」の略です。

具体的には社員へのお給料に代表される人件費、営業諸費用である販売費、さらにオフィス賃借料などです。
つまり、会社の必要経費です。販管費は、売上総利益の範囲内で支払うのが原則です。
売上総利益は、会社のもっとも基本となる利益です。
このため、この売上総利益の範囲内で、会社の必要経費を支払う必要があります。

売上総利益に占める販管費率は、つぎのような計算式で求められます。

 

売上総利益に占める販管費率(%)=(販管費÷売上総利益) ×100

 

A社の売上総利益に占める販管費率の推移は、つぎのとおりになります。

分析/年度 ○1年 ○2年 ○3年
売上総利益に占める販管費率 83% 150% 260%

 

※参考 ○1年の計算 25,000÷30,000=83%

 

A社はここ3年間で、売上総利益に占める販管費がどんどん増えています。
01年には83%で100%を下回り売上総利益の範囲内で、おさまっていました。
しかし、02年には、大きく100%を上回り売上総利益を超えています。
さらに03年には260%と悪化してます。

 

A社の経営分析講評

 

A社は、売上高の順調な伸びとは裏腹に経営危機に直面しています。
売上原価率、販管費率の上昇にともない、利益を確保しにくい経営体質になっているからです。

早急に売上総利益の確保をするために売上原価率の改善を図らなければなりません。
仕入引業者の再選定やムダな仕入コストはないか、を見直す必要があります。
販管費である諸経費も一つ一つ見直すことも必要です。

意外に経費は気づかない無駄があるものです。

賃借しているオフィスなら賃借料の価格交渉や他のテナントへの移転も検討すべきです。

人件費の削減は最後の手段であることを忘れてはなりません。
税理士などがよく指導する改善策ですが、安易に着手するのは、危険です。
社員のモラールが低下しやすく、経営そのものが急速に衰退してしまう一因となるからです。

 

いかがでしょうか?
経営者として、この程度の知識でも十分に役立つはずです。
さらに経営分析の基本を学んでいきましょう。

 

経営分析で、会社の支払能力を知る