もくじ
決算書は、簿記の最終的なゴールです。
決算書の作成に重要な役割を果たす「決算整理」を説明します。
そして、経営者にとって必須の知識である貸借対照表と損益計算書の基本的なしくみを紹介します。
決算の手順を知ろう
決算とは、日々の仕訳や伝票、あるいは総勘定元帳を整理集計し、損益計算書や貸借対照表を作成することです。
具体的には、
①試算表の作成
②決算整理
③決算整理後残高試算表の作成
④損益計算書と貸借対照表の作成という順序になります。
決算整理とは何か
毎日の「そうじ」と年に1度の「大そうじ」
年に1度「大そうじ」をする人も多いのではないでしょうか。
毎日使う机などは、毎日そうじしますが、あまり使わない倉庫や物置はどうでしょうか。
おそらく、年に1度の「大そうじ」できれいにするのではないでしょうか。
たしかに倉庫や物置も毎日そうじする方が、きれいになることは間違いありません。
しかし、あまり使わない物置を毎日マメにそうじするのは、効率的とはいえません。
・毎日の「取引」と年に1度の「取引」
簿記の処理にも、同じようなケースがあります。取引の処理を毎日行うよりも決算のときに1度、整理すればよい取引です。
この整理すべき取引を「決算整理」といいます。
「決算整理」とは、決算にあたって、未処理のものをきれいに整理することです。
決算整理に行われる仕訳を「決算整理仕訳」といいます。
おもな決算整理はつぎのとおりです。
・仕入商品の整理 ・貸倒引当金繰入
決算整理① 仕入商品の整理
「売れた商品」と「売れ残った商品」を整理する
仕入れた商品は、すべて売れず、いくらか売れ残るのがふつうです。
このため、決算において、「売れた商品」と「売れ残った商品」にきれいに整理する必要があります。
売れた商品は「売上原価」、売れ残った商品は「繰越(くりこし)商品(しょうひん)」となります。
繰越商品とは、来期に繰り越して売る商品という意味です。
・仕入商品を整理する
売れた商品 | 売上原価 |
売れ残った商品 | 繰越商品 |
[取引例] ボールペン10万円分を掛けで、仕入れた。
借方 | 貸方 |
仕入 100,000 | 買掛金 100,000 |
決算時の在庫状況はつぎのとおり。
[売れた商品] 70,000 売れ残った商品 30,000
この[取引例]では、在庫があるため決算整理の必要があります。
・決算整理仕訳は、つぎのとおりです。
借方 | 貸方 |
繰越商品 30,000 | 仕入 30,000 |
売れ残った商品の3万円は、「繰越商品」となり、来期に売り上げるべき商品となります。
なお、繰越商品は、「資産グループ」の勘定科目になります。
貸方にある「仕入」は、取消を意味します。 決算整理によって、仕入を「取消(とりけし)」たのです。
なお、売上原価は、つぎのように計算されます。
仕 入 決算整理による取消 売上原価
100,000 - 30,000 = 70,000
決算整理② 貸倒引当金
売上の代金が回収できなかったらどうする?
取引先の経営状況はさまざまです。
経営状態が良い会社ばかりなら問題ないのですが、経営状態があまり良くない会社もあります。
このため、会社は「売掛金」や「受取手形」が約束した日に確実に入金されるか心配です。
仮に1億円の売掛金がある取引先が倒産したら、1億円のお金を失うことになります。
これは、「受取手形」も同じです。
3億円の受取手形の支払い先が倒産すれば、3億円の受取手形は、ただの紙切れになります。
このため、会社は、つねに「売掛金」や「受取手形」などの売上債権の回収リスクを考える必要があります。
・回収リスクのための保険―「貸倒引当金繰入」
売上債権が回収できなくなることを貸倒(かしだおれ)といいます。
決算整理では、あらかじめ回収リスクを費用計上することが認められています。
つまり、回収リスクに対する「保険」です。この保険は、「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)繰入(くりいれ)」勘定となります。この仕訳の相手勘定科目は「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」となります。
「引当(ひきあて)」というのは、将来のためにあらかじめ積み当てておく、ということです。
つまり、資産を取り崩して積み当てておくという意味です。
具体的な決算整理仕訳はつぎのとおり。
・100万円の売上債権に対して、20万円の貸倒引当金繰入を計上した。
借方 | 貸方 |
貸倒引当金繰入 200,000 | 貸倒引当金 200,000 |
「貸倒引当金繰入」は費用グループになり、「貸倒引当金」は、資産の減少と考えてください。